驚きと感動と発見に沸いた
『第2回BCS受賞作見学会』優れた建築作品を創造した発注者・設計者・施工者3者に贈られるBCS賞(社団法人 建築業協会賞)。社団法人 建築業協会関西支部では、建築を学ぶ大学生を対象に、建築への理解と関心をさらに深めてもらうため、BCS賞受賞作品見学会を実施しています。第2回目を迎える今回は、本年度の受賞予定作『佐川美術館』と1999年度の受賞作『MIHO MUSEUM』の見学会を11月14日(火)に開催しました。
予想をはるかに超える申込みが殺到し、急遽バスを1台追加するという嬉しい悲鳴の中、約80名の大学生が参加。目的の美術館は共に滋賀県にあり、見学コースは『MIHO MUSEUM』〜『佐川美術館』をまわるAコースと逆をたどるBコース。この見学会をレポートする私はAコースに同行しました。
現代の桃源郷を再現――『MIHO MUSEUM』
まずは、陶芸の里・信楽町にある『MIHO MUSEUM』。幾重にも連なる山々を、バスで縫うように進むと、突然モダンな建物が飛び込んできます。レセプション棟なのですが、紅く染まった山と見事に溶け合っていて、早くも感動! 興奮さめやらぬ中、施工を担当した清水建設の野口氏の説明も始まります。建築家ペイ氏、トンネル、桃源郷…『MIHO MUSEUM』のキーワードが矢継ぎ早に繰り出されていく。「ウン?ルーブル、ペイ…そういえば、なんか話題になっていたような…」。?マークで渦巻く頭を抱えながら、緩やかにカーブするトンネルを進むと、光あふれる出口の先に銀色の吊り橋が! さらにその向こうには、民家というより茶室のような建物が! 中国に古くから伝わる『桃源郷』をイメージした、深閑とした隠れ里が姿を現します。
美術館の扉をくぐると、エントランスホール正面のガラス壁いっぱいに山の稜線が浮かび上がっています。一枚の日本画の中に自らが溶け込んでいくような錯覚を覚えながら、彫刻だけで構成されている展示ホールへ。中国、ペルシャ、ギリシャ、ローマなど偉大な文明を築いた王朝の美術品が多数展示されています。しかも、一点一点の彫刻が美しく見えるように、細部にまでこだわったライティングは特筆もの。ただただ拍手!です。
感動に浸っている学生たちは、「“本物”の醸し出すオーラに圧倒された!」「すごいドラマチック!なにもかもが現実ばなれしている」。「工法のすごさ、素材使いのおもしろさを発見した!」とのこと。学生たちが、想像の翼を大きく広げたのは言うまでもありません。
癒しの空間を創造――『佐川美術館』
こだわりが随所に息づく『MIHO MUSEUM』を後にして、琵琶湖大橋の近くにある『佐川美術館』へ。バスが琵琶湖沿岸独特のリゾート感覚漂う街中を走り抜けると、忽然と水に浮かぶ平屋造りの建物が視界いっぱいに入ってきます。
グレーで統一された『佐川美術館』を囲む水庭は、周囲の景観に調和するように考えられたもの。満々と水を湛えているその姿を常に保たなければならず、水の研究だけに約一年の時間を費やしたのだとか。癒しの空間の裏側は、実は緻密な計算と汗と努力の積み重ねの上に成り立っているのです。創造することは、いつも大変! 平山郁夫氏の絵画と佐藤忠良氏の彫刻が常設展示されている館内は、優しい外観同様、ゆったり鑑賞できるのが魅力。他の美術館にありがちな緊張感はどこにもありません。
さらに、館内の通路やカフェテリアが水庭に面しているので、ブレイクにぴったりの空間となっています。「この解放感が心地いいですね!」「建物と風景の一体感が素晴らしい!」と学生たちの印象もこの2点に集中。時間が許す限り、いつまでも居たくなる“癒しの美術館”だと感じました。
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今回の見学会に同行して感じたことは、まず、学生たちの遠足モードと真剣モードの切り替えの上手さ。少し変な言い方だけど、バスの中や館内の移動中は私語が多いものの、こと説明が始まると、壁や床の素材に触れたり、照明の位置を確認したり、施工担当者をつかまえて疑問をぶつけたり…。大いに刺激を受けたことが、手に取るようにわかりました。
二つの美術館を通じては、“和敬清寂(わけいせいじゃく)”という茶道の言葉を思い浮かべました。「心を和やかにし、他を敬う」、人と人の在り方について述べたものですが、これらの美術館は、人と人はもちろん、人と自然との距離の取り方を見事に体現していると感じました。美術館という目に見える空間だけでなく、目に見えないその考え方にも“こだわり”という余白が息づいているような…。美術館が自然との共存を前提に、感性を磨き心安らぐ場所として、進化していることを教えてくれたといえます。
(レポーター:S.K.)