第4回BCS賞受賞作見学会に参加して

大阪大学 西山 慎一郎

 今回の見学会は、久保惣記念美術館と近つ飛鳥博物館ということで漢字の読みにくい二つの建築でした。私は前回から参加させてもらっていますが、交通の便があまりよくない場所や、普段馴染みの薄い地域をまわってもらい、また解説もあるということでかなり勉強になります。

1. 久保惣記念美術館

 ここには、数分早く着きました。外観は古い屋敷のような感じでした。あまり美術館という印象ではありませんでした。中に入って感じたことは、屋根の傾きにあわせて天井も傾かせていて木造建築にある梁(?)のようなものがなかったのでこれは構造的には木造建築では無いのだと認識しました。天井の一番上にある照明は自然照明かと思ったのですが人工照明でした。以前の建物にあったものを使って家具やモニュメントをつくっているのはおもしろかったのですが、和風建物なので工法や意匠など建築にも以前のものを取り入れているのかを聞き忘れてしまい後悔しています。

 この美術館は新館と旧館が離れており、新館側が大きな道路に面していることから新館側に入口が配してあります。そして、その間に造った庭や市民ギャラリーや市民ホールが建てられていました。ここで気になったのは、新館から旧館の移動に一度屋外に出るということです。屋内から愉しんだ景色をもう一度屋外から体験できるというのが大変おもしろい仕掛けだと感じました。また旧館の入口を展示スペースにして活用しているのもおもしろいと思いました。

 しかし、横に流れる松尾川や、その松尾川の横の広場への視界はほぼ遮られていたので、屋外に出た時、屋内から見たそれとはまた違う景色が見えたらおもしろいのになと思いました。また旧館の庭は高低差のために建物内から見てもよくわからなかったのが残念でした。市民ホールのデザインは奇抜で、最初に新館に行く時に見た感じでは「この敷地に調和していないのでは」と感じたのですが、敷地の外から見ると風景にしっくり溶け込んでいたので驚きました。

 最後に外周をまわって気づいたことは、この地域に外観的には合わせていると思いました。交差点の外観がさみしいと感じたのですが、これも地域との調和を気遣っていたからなのではないかと考えています。

2. 近つ飛鳥博物館

 ここは、安藤忠雄氏の設計で以前から行きたいと思っていたので期待していました。バスを降りて建物脇の、池へと続く階段から入っていきました。天井がすべて階段で眺めはきれいでした。階段のなかから張り出している塔のようなものは内部でなにかと関連があるのかなと思ったのですが、地下2階から地上4,5階ぐらいの高さはあり、真っ暗な筒でした。後でこれはこの建物自体を古墳に見立てる為のものだったことがわかり、なるほどと思いました。

 建物の中に入って感じたことは、中央部分や階段隅の部分などの天井からの光の取り入れ方は大変興味深く、とても勉強になりました。また管理施設と展示施設をうまくわけていて、そのなかで光の関係もうまく処理していたのもおもしろかったと思います。管理部門は見学できる機会があまりないので、この見学会ならではの貴重な体験をさせていただきました。前回の大山崎美術館と共に安藤忠雄氏の美術館はよかったと思います。

 今後は建築物だけでなく奈良県の今井町など町単位での建物も見に行ってみたいと思います。


第4回BCS賞受賞作見学会に参加して

関西大学大学院1回生 森田 純子

『和泉市久保惚記念美術館』

 まず一つ目の見学場所は和泉市内田町にある和泉市「久保惚記念美術館」でした。この美術館は和泉市を代表する企業の代表者である久保惚太郎氏が、地域に根ざした文化振興の拠点づくりを目指し地元への記念として、美術品、敷地、建物と基金を寄贈し建設された施設です。1983年に建設された本館と市民ギャラリー、市民ホール、1997年に新たに計画された新館からなります。本館は元々久保惚氏の家が建っていた敷地に庭と茶室だけを残し竹中工務店により設計された。当時設計を担当された脇田さんが見学会で設計コンセプトなど丁寧に説明してください設計者の細かい意図を理解することができました。庭を残し敷地かフラットではないので設計にはかなり悩まれたそうです。本館の建物の配置は庭を囲むように雁行形とし、敷地に立っていた木を材料に家具を設計したり、久保惚氏の家の大黒柱をオブジェとして飾られたりしていました。又、扉の取っ手にデザインされたユリに設計者の思い入れが感じられました。新館は14年後に建設され当時の計画には無かったそうです。デザインは周辺の景観に調和された和風の白壁と瓦屋根、ピカソやモネなどの西洋美術作品を鑑賞した後に小川のある庭園を鑑賞できるよう庭に面してはガラス張りになっており、来館者が心を落ち着ける空間となっていました。他の美術館に比べラウンジが広く取られ、展示室間には中庭があり通路には木製のブラインドがデザインされていました。シンプルな外観の中にこのような多くの日本の美と世界の美を同時に感じることができました。

『近つ飛鳥博物館』

 午後からは山々や多くの古墳に囲まれた「近つ飛鳥博物館」を見学しました。安藤忠雄氏の設計で、到着してまず目に飛び込んできたのは池のほとりから続く大階段でした。バスからおりその大階段を横切り、こんどは階段を切断しているコンクリートの打放しの高い壁の間を通り抜けてやっと入口に到着しました。このアクセスは古墳の中に入っていくイメージを来館者に与えるためだそうです。ここでは工事を担当した鴻池組の管さんに当時の現場の苦労話などをお聞きしました。コンクリートを打つにあたって同じ材料を使って同じ方法で行ったとしてもその日の気温、湿度、天候によって仕上がりの色が変化してしまうそうです。展示室は仁徳陵古墳の模型を中心に1階から展示物を見ながら地下に降り博物館の広場にあたる吹抜けの部分、麓谷寺石塔の展示に出てきます。そこは、外部の大階段を突っ切って外からの光が塔と窓のほとんど無い館内を明るく照らしています。ここを訪れる人々は平成と古代の古墳を同時に体験することができる異空間だと感じました。

 今回BCS賞受賞作品見学会に参加できたことにより、私の中で現代に残すべき作品に出会えたような気がします。これからも多くの建築家のたまごたちが1つでもすばらしい建築にであえるよう見学会に参加して欲しいと思います。学生ためにこのような見学会を開催していただき本当に有難うございました。


〔受賞作品の概要〕

1)『和泉市久保惣記念美術館・久保惣ホール』
(所在地:和泉市内田町85/建築主:久保惣(株) 久保惣記念文化財団)

和泉市を代表する企業が、地域に根ざした文化振興の拠点づくりを目指して建設した施設である。地域に残る「瓦屋根の集落」と周囲との調和に主眼を置いたこの建物は、美術館本館と旧久保邸の茶室、庭園の保存修景と併せて一体となっている。また、久保惣ホールはコンサート、講演会に利用され、美術館活動を側面から支えている。庇の出の大きい屋根瓦の美術館本館と新館の間にあって、曲線的な銅板瓦の建物が違和感なく周辺の環境に緊張感を持たせている。

新館のエントランスホールに入り、ラウンジにつながる出迎えの空間の質の高さと整備された庭園は暖かな心地よさを感じさせる。設計に際しては、川の付替えとランドスケープの扱い、高さを抑えたファサードの屋根、庇裏のデティールが注目に値する。壁には目地なしの塗り壁など細やかな心配りが施され、建築主の建築に傾ける熱意を漂わせている。


久保惣記念美術館の内庭
 

美術館での見学の様子
 

2)『大阪府立近つ飛鳥博物館』
(所在地:大阪府南河内郡河南町大字東山229)

「近つ飛鳥」という呼び名は『古事記』にも記され、履中天皇の同母弟(後の反正天皇)が、難波から大和の石上神宮に参向する途中で二泊し、その地を名付けるに、近い方を「近つ飛鳥」、遠い方を「遠つ飛鳥」と名付けたという。「近つ飛鳥」は今の大阪府羽曳野市飛鳥を中心とした地域を指し、「遠つ飛鳥」は奈良県高市郡明日香村飛鳥を中心とした地域を指す。

河内の「近つ飛鳥」の地には多くの渡来人が住み、渡来文化が真っ先に流入した古代文化の先進地域でもある。飛鳥時代にかけての文化遣産を中心に、「日本古代国家の形成過程と国際交流をさぐる」という館建設のテーマに最も適う地に位置している。

館の南には「大阪府立近つ飛鳥風土記の丘」がひろがり、日本の代表的な群集墳である一須賀古墳群が保存されている。博物館は緑に包まれた環境の中で、周辺の文化遺産や自然とみごとに調和した施設として高く評価されている。


大阪府立近つ飛鳥博物館全景
 

近つ飛鳥博物館見学の様子