第6回BCS賞受賞作見学会
神戸芸術工科大学 石井 清巳
現在大学4回生の私は第3回BCS受賞作見学会から毎年参加させてもらい、今年で4回目参加の常連客です。見学場所によっては以前に個人で見学しに行ったことのある所もあるのですが、BCSの見学会だと、個人では見せてもらえない内部や建設に関わった方々の様々な苦労話や見所・誇れる技術を詳しく教えてもらえるほか、疑問に感じた所などを質問すると丁寧に教えてもらうことができるので、毎回とても充実した建物見学ができました。そして、今年は以前、内部が見学できなかった『京都コンサートホール』と施工途中を見ただけの『平等院ミュージアム 鳳翔館』とどちらも不燃焼の見学しかできなかった建物の見学だったので第6回BCS受賞作見学会もとても楽しみでした。
京都コンサートホール/磯崎 新 設計
このホールは京都市街地の北部にあります。内部には大小2つのシンフォニー専用のコンサートホールがあり、音響的にも様々な工夫が凝らされすぐれた環境で演奏を楽しめる場所です。
小雨が降るなか集合時間まで時間があったので、建物の外観や周辺を見学してみると、外観は近代建築そのもので、そこに京都らしさや柔らかで繊細な日本建築の良さを感じることができず、少し残念でした。しかし、磯崎氏の建築の見所は外観だけではないはずで、内部空間やアプローチに期待することにしました。
見学会は、まず音がよく響くエントランスホールで関係者の方から資料を頂き、施設のコンセプトや完成するまでの様々な話を聞きながらもその場の異様さを感じました。六角形のエントランスホールには12本の柱が円形で建ち並び、床は黒と白の幾何学模様のタイルが敷かれています。ここでは一時でも日常を忘れて音楽の世界に引き込まれてもらいたいというコンセプトからのようで、コンサートホールまでの動線はエントランスホール周囲のスロープを長くゆっくりと上がり、その間にコンサートへの期待感は高まります。
コンサートホールでまず目に付くのは、通称天の川と呼ばれる天井の一枚板と巨大なパイプオルガンです。天の川は厚さ6cmのモルタルに音を乱反射させるための凹凸と照明が散りばめられた物で、重さ約100トンの一枚重量天井。施工上特に苦心した物の一つだが、これによって日本では作れないと言われていた最高の音楽空間と誇れるホールができたようで、見た目にも聞く耳にも最高の贅沢な空間がここにあると思いました。また、パイプオルガンはドイツ製のパイプ本数7155本の巨大な物で、とても神聖な場所のように思えました。
平等院ミュージアム 鳳翔館/栗生 明 設計
この宝物館は前宝物館の老朽化に伴う建替えで、テンプルミュージアム(指定博物館)として設計された建物です。また、建築とランドスケープを一体に計画し、平等院境内と周辺環境の融合を目指しています。
バスを降り、外観を見た第一印象は緑に溶け込む建築。地上に出ている空間のボリュームが低く小さいからか、とても軽い、そして透明な建物だと思いました。動線はミュージアム→鳳凰堂→ミュージアムと一筆でシンプルに繋がり、高低差が自然に解消されているのが良かったです。鳳凰堂は木造で存在感がとてもあります。そこに違和感なく新しい建物を設計する方法は、賛否両論様々な答えが出てくると思いますが、私はこの緑に隠れるガラスとコンクリートの建築がとても好きでした。鳳凰堂からミュージアムの方向を見ても、その姿は以前からある緑に隠されて見えず、鳳凰堂の景観を邪魔することはありません。(鳳凰堂の背景にマンションがあることに気づいた時にはショックでした…)
そして、鳳凰堂を見終わってからミュージアムの入口は現れ、見学者は自然とそこへ導かれます。入るとコンクリートの壁が建ち塞ぎ、一瞬目が眩むような暗く狭い通路が伸び、目が慣れてくると打放しコンクリートの壁に重みと温かさを感じました。普段なら殺風景で冷たい壁が杉目模様を付けることにより、歴史を刻んだ重みを持つ壁のように見えます。その他にも様々な工夫が至るところに見え、建物で木の重みを感じ、展示空間で宝物とゆっくりと語ることのできるミュージアムでした。私にとって建築を見学することは自分の物差しを磨くことです。4年間に見て回った建物はとても貴重な体験でした。そして、現地で実際に空間体験をしながら聞かせてもらう説明はスライドや本で学ぶ以上に分かりやすく印象に残るものでした。4年間、本当にありがとうごさいました。これからもBCS受賞作見学会が続くことを祈ってます。
第6回BCS賞受賞作見学会に参加して
大阪大学 秦 丹尼
私費留学生として来日して数年、以来、毎日の生活は学校の勉強、そして基本的生活のためのアルバイト以外、町や建築物の見学と個人趣味などの他の活動は非常に限られていました。
『第6回BCS賞受賞作品見学会』の案内を見てから、どうしても今回参加したいと思って、早速申し込みました。一日で、機能や形態やデザイン手法が全く異なる2つの建築物を見学して、非常に楽しく有意義な一日を過しました。『京都コンサートホール』
見学する前に、「見学会のご案内」により少し概要的に建物の特徴が分かっていましたが、イメージはほとんどない。
コンサートホールへ着き、目の前にまず、黒い大型の陶板で覆われた円筒型の立体を見られました。単純・素朴・荘重の外観が非常に印象を受けたが、中に入って、内部は変化のある豊富な空間でした。
この円筒型の内側を螺旋状に上がっていくふたつのコンサートホールへのアプローチは普通の劇場やホールなどの設計手法と違い、人々はさまざまな体験をしながらホール入口に到達することは新鮮感を感じられます。その上の四階に設置されている六角形の小ホールは有機的で円型と接合していて、特に星座の描かれた天井、UFOのような楕円型の舞台照明、光のラインなど、独特の雰囲気のあるインテリアは一番印象を受けました。
グレーの基調色である外観と異なり、大ホールは伝統的な金色の基調を守りながら、簡潔で洗練されているインテリアはさすが日本の建築家の作品だと思いました。
音質を保証するために、普通のホールの軽い天井と違い、このホールは約100トンの一枚の天井を用いられ、その重量天井の開発や施工、特に建設の最後期に阪神大震災に遭った時の心配など、工事の担当者に当時の苦労話などをお聞きしました。
今回はその音質(空席でも)を聞こえないのはちょっと残念ですが、何時か現場でコンサートを聞きに行くかと思っていますが。『宇治平等院鳳翔館』
国の史跡名勝地・世界資産にも登録されている平等院のような条件の中、ミュージアム「鳳翔館」の設計は景観・配置の配慮、宝物館として機能の確保等のため、非常に難しいプロジェクトと思います。
現場を見ると、「新」「旧」環境の調和・対比とその適切な「度」の把握には非常に感動・感嘆しました。コンクリート、ガラス、鉄骨等の現代的材料で作った現代的な建物は伝統的な庭園、建築物と有機的融合することがやはり優れた設計手法だと感じました。
建物の地下への配置、地上部の高さの抑え、屋根や構造物の抽象表現などの手法は以前にも知っていますが、「鳳翔館」の見学・実体験は本当に良い勉強になりました。狭くて長いエントランス空間は思わなかったが、高さの変化、光の注入、奥への誘導等の処理によって、非常に面白い空間でした。黒いに近く、展示ショウーケースと柔らかいライト以外何もない展示室「雲中の間」には再び日本建築空間の“純粋さ”を感じました。
また、設計担当者が指摘されたように、あるマンションが重要な名勝地の景観への配慮不足のため、平等院周辺環境によくない影響を与えた等の問題に対しては、自分にとって今後のデザインに十分な注意を払わなければならないとも考えました。これから、中国にも最も多くの日本の優秀な建築家の作品を見えるように期待しています。建物実物の見学は建築専門の学習にとって非常によい方法と思います。本当に楽しい見学会を開催していただき有難うございました。
〔受賞作品の概要〕
1.京都コンサートホール
所在地 京都市左京区下鴨半木町1-26
建築主 京都市特 徴 京都市の北部、山紫水明の地に、京都で初めてのシンフォニー専用のコンサートホールとして建てられた施設である。施設の外観はグレーが基調で、黒い大型の陶板で覆われた円筒型の立体とそれを取り巻く浅い池に沿ったプロムナードをかぎ形に曲がりながら、円筒の1階に設けられたエントランスホールに導かれる。エントランスホールから円筒形の内側に沿ってらせん状に設けられたアプローチには、作者の建物とホールとの調和を目指した意図が明らかに感じ取れます。シューボックス形の大ホールは、正面右に寄せられたパイプオルガンと正面左側に設けられた特別席によって、左右対称の堅苦しさを避ける効果を高めている。また小ホールのデザインも天井高による音響不足を補うため、壁面の上部を外側に広げて気積を補う工夫が見られる。
2.宇治平等院ミュージアム 鳳翔館
所在地 京都府宇治市宇治蓮華116
建築主 宗教法人 平等院特 徴 宇治平等院鳳翔館は世界遺産にも登録される「宇治平等院」の「宝物館」として建設されました。
これまでの宝物館の建替えを機に、単に文化財を収蔵するための施設ではなく、日常的な管理や修復と並行して、来館者に収蔵品を公開できるような「宝物館」を目指すことが条件とされました。これらの条件を満たすボリュームを確保することと併せて、浄土庭園の景観への配慮から施設のほぼ全てを地下に納めることとされました。しかも、工事の影響を最小限に納めるため、敷地南側の県道拡幅工事の機を捉えて、全ての工事が道路側から進められました。
池の端部から築山に切り込むように導かれると、打継ぎ目地を巧みに消した杉板型枠コンクリートの大壁面を経て、主たる展示室へと誘われる。管内の空間も閉ざされた下層部分から、上層に行くに従って開放的で明るくなり、最後に屋外の広々とした苔庭と違和感のない一体空間となっています。地上部分にはくつろぎのための空間が確保されており、県道側の竹垣を垂直にアレンジした斬新なデザインと相まって、思い切った新旧の対比が新鮮である。