第7回BCS賞受賞作品見学会感想

京都大学 永田 未奈美

 

1. MIHO MUSEUM

 『どこまでじらすんだ!?』
 山の奥深くまで入り、バスを降りてもなお、お目当ての建築は現れず。MIHO MUSEUMに対する一番の感想である。その甲斐あってか、トンネルを進むにつれて期待はドンドン膨らんでいった。そして、トンネルを抜け、私はI.M.ペイが意図した通りに桃源郷との出会いを果たした。図学で見たような綺麗なラインを描いた吊り橋のワイヤー、その向こうには(ガラスが日光を反射しすぎて、ちょっと眩しい気もしたが)合掌造りを思い起こさせる勾配屋根の建築。『山の中から建築が!』と、思えるくらい自然に溶け込んでいた。自然に溶け込む建築といえば、大山崎。2回訪れたが、あそこも日をおうごとに建築が木々に隠されていっている。「自然との共生」どちらの建築も見事にその目的を達成して、私はこの2つが好きだ。
 トンネルのパンチング・景観に配慮した吊り橋・ランプ・屋根の格子・コンクリート梁の一工夫・・・この建築のいたるところで建築家の細やかな気遣いが感じられた。私なりに目をひいたのは、本館入ってすぐのロビー全体の色だ。屋根の格子に施された塗装の色と壁と床の大理石の色。全体を同じ柔らかな色にしてあったので、照明や自然光から得られる以上の明るさと空間の広がりが感じられた。時間が非常に短かったので、内部観察があまりできてないのが残念です。

2. 司馬遼太郎記念館

 話には聞いてはいたが、ホンマに住宅街の中にあって、それだけで面白い建築だった。敷地の入り口から記念館入り口に続く、木や草花でうっそうとした庭の小道がそんな外界との切り離しをしてくれていたように思う。暗く、もじゃもじゃと生えていた植物たち。でも、そんな植物たちがあったからこそ、よけいに、民家の庭から突然、別の空間に来たような錯覚を感じた。
幅はそんなにないのに、高さが十分なほどにとられていたので、圧迫感を感じることはなかった。また、白のステンドグラスが陽の光をやわらげていたので、静かで穏やかな空間が広がっていた。この空間が生み出すゆったり感から、私は穏やかな気持ちで本に囲まれているような気分になった。ヘタしたら何時間でも居られたかもしれない。そのぐらい心地の良い空間だった。しかし最も驚くべきことは、司馬さんの蔵書の量だ。記念館に置かれている2倍の量の本がまだ自宅のほうに置かれているらしい。いたって普通の家のどこにあの2倍の量が納まっているんだ!?ほんと、驚きである。あと、気になったのは記念館の外回りの通路の暑さ。あれは何とかしてほしいものです・・・

3. 最後に

今回はなかなか足を運びにくい場所の建築を見に行けて、とてもいい機会をいただけたなと思います。学生ばかりで、変に気を使うこともなく、見学することも出来ました。が、リラックス雰囲気の中で、マナーの悪さなどが目に付いたりもしました。せっかくいい勉強の機会を用意してもらっているのだから私達学生もそれに見合う振る舞いをしなくてはいけないのでは?と思いました。


第7回BCS賞見学会 感想文

関西大学 乾 淳一

 

 「MIHO MUSEUM」のトンネルを抜けた先を上から撮った写真を見て以前から行ってみたい建築でした。そしてBCS受賞作品見学会のチラシを見て是非この機会にと思い参加させて頂きました。
 今回初めての参加にして感想文を書く機会を頂き、建築家の設計趣旨や他の人の評価とは多少異なってくるところもあるとは思いますが、自分がその建築から受けた素直な感想を書いてみようと思います。それが建築のあるべき姿だと思うので…。

『MIHO MUSEUM』

 ルーブル美術館を手がけたI.M.ペイ氏が、ガラスのピラミッドの形を変え日本の歴史を取り入れつつ滋賀県信楽の山奥に桃源郷を出現させました。中に入ると全面緑の山と松の木が来館者を出迎えてくれます。そして上方からはいっぱいの光が降り注ぎ気持ちのよい空間となっています。エントランス前面には横に伸びた窓があり日本建築の開口部のように信楽の山を借景するように縁側のような空間がありました。しかし、日本建築での借景は長く出た庇と縁側によって外の景色を一部カットすることで見る景色を集中させることによさがあると思っていますが、ここでは、スカイフレームにガラスをはめ込んだ屋根になっているので上まで抜けすぎであったきもします。展示室は平面配置をみるだけではきれいに構成されていますが、実際に体感してみると幾何学によって構成されているので垂直軸からずれて次の展示室が配置され、うす暗く彫刻が浮かび上がるようにライティングされていて奥へ奥へとひきずりこまれるような感覚をうけました。

『司馬遼太郎記念館』

 司馬遼太郎記念館はこの度で2度目の訪問となりました。初めて来た時には建築物の全体像がつかめない不思議な感じがしました。これは決してスケールや埋まっているという意味ではなく、折れ曲がった庭の茂みをあるきどこまでも続きそうなコンクリート打ちっ放しの曲面を進んでいくことによって生じたものです。記念館の中は司馬さんの書斎のように壁中に本をめぐらせている様子を再現されています。その本棚の高さは11mにも及びます。階段室のステンドグラスは壁のように一面にしてくれという安藤さんの意向により、施工にも苦労されたようです。

今回の両建築を訪れて感じたことは建築自体に到達する「プロセスの大切さ」・「自然との共生」ということでした。

「司馬遼太郎記念館」では森の中をイメージされ、「MIHO MUSEUM」も自然との共生を大事にされていました。今回の見学会で愛知万博の構想を担当した中沢新一氏が書いた「自然の叡智」の中の「…21世紀に私たち人間が取り戻さなければならないものは、自然と生命への共感に満ちた、叡智のふるまいなのです。」という一節を思い出しました。そして、偶然にも司馬遼太郎さんの「21世紀を生きる君たちへ」の中でも21世紀の自然に対することも書かれていました。いままで自然との共生は自然からの叡智だけを受けていましたが、自然というテーマを掲げるだけでなく人間・建築からの叡智を自然に与えなければいけないと感じました。

「司馬遼太郎記念館」は先にも記述したようにプロセスにより建築物の全体像がつかめない不思議な感じを受け、特に「MIHO MUSEUM」では道に迷ってやっとたどりついた桃源郷をイメージさせるようトンネルなどプロセスに重点がおかれています。レセプション棟から、ゆるやかな曲線と斜面を歩き、静かでほんのり風が通るのを感じる洞窟(トンネル)を抜けると信楽の山におおわれて入母屋を模した屋根の建築が現れます。そのトンネル内はアルミのパンチングメタルにより音が反射しにくくさせ、照明は人の目にやさしい色温度に調節されているので、トンネルを抜けたあとの変化を余興させるように一時の静寂を作り出されていました。ですから、「MIHO MUSEUM」でレセプション棟から本館に行くのに電機自動車のサービスがありましたが、本館までの道程は是非とも風や光・自然を感じながらのんびりと歩いて行ってもらいたいものです。

各場所で管理者や施工者などから建築家の想いや施工の苦難など貴重なお話もきけました。次回の見学会も是非参加させていただきたいと思います。


〔建築概要〕

MIHO MUSEUM (所有者 宗教法人 神慈秀明会)

所在地  滋賀県甲賀郡信楽町大字田代桃谷300
特  徴  本建物はパリのルーブル美術館やワシントンD.C.のナショナルギャラリーなど、今世紀最高作といわれる作品を創出し続けている偉大な米国建築家 I.M.Peiが渾身の力を込め、中国の桃源郷をコンセプトに創作した作品の一つとして知られる。緑深い信楽の山里を通り、緩やかに曲がったトンネルを抜けると、一気に視界が開け、深い谷に架けられた斜張橋の先には、入母屋をかたどった鉄骨造のガラス屋根の空間がアプローチを形成している。巧みに配置された植栽が建物を覆い尽くしており、自然との見事な調和を醸し出している。山の岩盤を削り取って3層分の建物の埋める難工事を達成した技術力は高く評価されている。

司馬遼太郎記念館 (財団法人 司馬遼太郎記念財団)

所在地  東大阪市下小阪3-11-18
特  徴  日本の知性といわれた司馬遼太郎の記念館。自邸に隣接してつくられたこの建物は、多くの部分が地下に埋め込まれ地上部分のボリームを抑えている。庭には司馬氏がこよなく愛したという雑木が緑陰をつくり、周辺の住宅街との調和が図られている。記念館には司馬氏の知の源泉という約2万冊の膨大な書籍が高さ11mの弓形の壁面に設けられた書棚に納められている様は、訪れる人に緊張感を与えずにおかない。また、世界の“アンドー”の手になるこの建物は壁の曲面を巧みに活かし、狭さを感じさせない動きある空間を提示しており、建築時には、型枠や鉄筋工事に厳しい加工精度が求められたことを容易に想像させる。あらゆる部分に匠の心と技が投影された名建築である。