第10回BCS賞受賞作品見学会に参加して
大阪大学工学部地球総合工学科3年 相原 恵
私はこの見学会に参加するまで、BCS賞という賞の存在すら知りませんでした。どうやら無料で素敵な建築物に解説付きで連れて行ってもらえる(しかも豪華な昼食付!)お得な見学会らしい、というわけで参加を希望しました。
今年の受賞作品の見学先は、滋賀県の琵琶湖沿いにある『佐川美術館』と、京都の宇治にある『平等院ミュージアム』でした。行きのバスの中で、BCS賞は建築主・施工者・設計者共に優れた建築物に贈られるものです、という説明を受け、できるだけ多角的な視点で二つの建物を見学することを心がけました。
◆佐川美術館
わぁ〜っ!
バスを降りたとたん、参加者から大きな歓声が上がりました。
水に浮かぶ展示施設。その真っ白な外壁一面に、水面に当たった太陽の光が反射して、ゆらゆらとした水模様を映し出していました。
二期工事で完成した茶室は、広間・小間を備えた本格的なものであり、伝統を重んじながらも、ガラス張りであったり、床と水面のレベルを等しくして開放感や水面との一体感を与えたりと、今までの茶室になかった新しいアプローチを取り入れた、現代的な茶室でした。
この美しい茶室は、茶室以外の殆どを地下に埋めたり、コンクリートをまるで杉材のように見せたりといった施工者側の創意工夫や、それを実現する為の数々の緻密な計算・実験などによって支えられていました。建築主の思いと、設計者のデザイン、施工者の技術の三拍子が揃わないと成しえなかったであろうことがとてもよく伝わってきました。
◆平等院ミュージアム 鳳翔館
この建物は今年の夏に一度訪れたことのある場所でした。鳳凰堂の改修工事に伴い、その間に訪問客に満足して頂く為の、いわば代替施設の役割をきっかけとして、計画・建設されるに至った建築物だそうです。
決して主張することもなく、周囲の自然に溶け込むようにひっそりとしたそのたたずまいは、主役の鳳凰堂の為に身を潜めているようにも思えました。
しかし一度中に入ると、正面奥にあるど〜んと筒抜けた大胆な吹き抜けに迎え入れられ、シンプルかつ落ち着いていながらも、内部全体に漂う神秘的な空間に、非日常的で不思議な何か大きなものに包み込まれるような感覚を覚えました。
この建物は、国宝を保存・公開する施設として、浄土庭園の景観を損なわないことや、バリアフリー、休憩所の役割、ランニングコストや維持管理等々、数々の制約を抱えつつも、現代的で抽象的な表現で風致地区に対応したデザインを取り入れ、一見目立たない建築でありながら、特有の美しさを放っていました。その在り方は、日本の伝統美を象徴しているかのようにも思えました。
この建物も、計算や工場での実物実験によって導き出されたたわみ量を参考にして配筋を行ったり、コンクリートを杉材のように加工し板厚を変えることで明暗をつけたり、緻密な打設計画により吹き抜け部分に継ぎ目をなくしたりと、細部隅々に亘るまで、驚くべき繊細な創意工夫と気の遠くなるような努力がなされていました。
初めて訪れたときも素敵だと思いましたが、知れば知るほど奥の深い美しい建物だと感じました。今回の見学会を通して、優れた建物というのは、私達が普段目にすることのない裏舞台に、高度な技術や、色々な立場の人の多くの創意工夫や努力が潜んでいるからこそ、美しくあることができるのだということを、身をもって体感することができました。
素敵な建物を(タダで)丁寧な解説を頂きながら見学することができた(+おいしいお昼ご飯付き!)だけでなく、建築物を訪ねる際に、今までになかった新しい視点を得ることができ、私にとってとても収穫の多い見学会でした。
来年も是非参加したいと思います。
近畿大学理工学部建築学科3年 丹羽智也
◆佐川美術館
午前中に貸し切りバスで大阪を出発し、滋賀県・守山へ。高速を降りた後、琵琶湖の側をしばらく走ると目的の場所「佐賀美術館」に到着です。バスを降りると美術館の館員の方々がお出迎えをしてくれました。
ゲートを入ると大きな切妻屋根が美しい建物と、その周囲には琵琶湖の水に関連づけられたと思われる大きな水庭を見る事が出来ます。この日の天気は良く、建物の外壁には水庭から反射した太陽光が映り、その光がさわさわと揺れていました。
館内のホールで館員の方が佐川美術館の概要を説明してくださいました。さらには、建物の建築に携わった、竹中工務店の方のお話も伺えました。設計の趣旨、施工時のお話など貴重なお話をして頂き、学生の私たちにとっては大変勉強になりました。
建物の見学中にも、館員の方が親切に案内、説明をして下さいました。通常は入れない倉庫に入ることができ、美術品の管理や搬入出の事など、館側のお話を伺えたのも今回の見学会の良い所でした。
屋根や水庭など印象的なものは多くありましたが、素材へのこだわりも強く感じる事ができました。特に2007年9月に新しくオープンした樂吉左衛門館では、それが随所に見られます。杉の木目をつけたコンクリート壁、オーストラリアの鉄道で使われていた木を用いた通路などなど・・・。また、当館の茶室も見所です。日本古来の茶室ではなく、竹等とともにガラス等の現代の素材を用いた新しい茶室がそこにありました。茶室に座り水庭を眺めれば心が和み、時間がゆっくりと流れているように感じます。
◆平等院ミュージアム 鳳翔館
佐川美術館の近くのホテルで、用意してくださった美味しい昼食を頂き、昼から京都府・宇治に出発しました。10円玉にも描かれている世界遺産の平等院鳳凰堂、そして鳳翔館の両方を見られるという事で大きな期待を抱きながら到着を待ちました。
到着し園内に入ってから、管理者の方や大林組の施工関係者の方のお話を伺いしました。 鳳翔館が鳳凰堂と調和するようにどのような工夫を施してあるかというお話、近くにマンションが建って景観を乱しているという問題などをお聞きしました。
鳳凰堂を見る時間はすこし短かったですが、建設から約1000年が経とうとする今でも、威厳のある姿が印象的でした。鳳翔館は鳳凰堂のすぐ近くにあります。鳳凰堂という主役を生かす為に建物の高さは抑えられ、建物の半分以上が地下に建設されています。また、地上に出ている部分も植栽により目立たなくするという配慮がなされています。現代的な建物が歴史的な建物と共在しているのですが、大した違和感は無く上手く調和が図られていました。また庭園があり、それを望みながら休憩できる場所が施されている事も好印象でした。
建物内部では随所に自然光が上手く取り入れられています。展示物ひとつひとつの価値は分からないのですが、程よい照明とガラスウォールケースにより魅力的な展示空間となっていました。最後に
今回、BCS賞受賞作品の見学会に参加でき、新鮮な勉強ができてとてもよかったです。そして、質の高い建物を見学する事で、建築の魅力を再確認する事が出来ました。貴重な機会をつくって下さった主催者の方々、館員の方々に深く感謝致します。また、機会があれば是非見学会に参加したいです。