BCS主催見学会(建築学生向け−実施分)
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“建築業の底力ツアー”に参加して

立命館大学理工学部建築都市デザイン学科4回生 矢野 展寛

BCSセミナー(設立50周年記念講演会)に参加した際に今回の見学会の案内を頂き、参加費無料という言葉に魅かれながら、普段の勉強では経験できない建築の現場を自分の目で見たい、そして何かを得たいという思いで応募しました。
今回の見学先は現在工事中の大阪市茶屋町にある「CHASKA茶屋町」と神戸電鉄有馬温泉駅付近の「エクシブ有馬離宮」、第46回BCS賞受賞作品である「兵庫県立美術館・なぎさ公園」の以上三つの建築物でした。

CHASKA茶屋町PHOTO●CHASKA茶屋町新築工事
大阪・梅田北ヤードの開発が決定したことは記憶に新しく、大阪・梅田駅周辺の建設ラッシュが注目されています。近頃急激に成長しているJR大阪駅北部の開発の一つとしての「CHASKA茶屋町」を見学することは、発展していく大阪の姿の過程を見るようで、とても興味がありました。
現地の集合場所に入ってすぐ、100分の1の模型が展示されていたので、開始早々テンションが上がってしまいました。それから、簡単な説明を聞いて最上階から下がっていくように建物を見学しました。全体の形状はほぼ完成しており、後は最上階や天井裏、床の工事など細かい工事が残っている様子でした。
建物は大きく分けて上層部と下層部に分かれ、上層部の三角形の先端にある部分は住宅やホテル以外にチャペルや宴会場なども含まれており、市民に開かれた場所として、とても魅力を感じました。見学はできませんでしたが、上層部と下層部の境目にある屋上庭園は気持ち良さそうだったので、竣工したら是非足を運びたいと思いました。担当の方からの説明を聞いていて驚いたことは、上層部が三角形の形状しているため、境目は柱が通っていない部CHASKA茶屋町PHOTO分があるのだそうです。そのため境目の部分はスーパートラスが一階以上の高さ分組まれている状況を、天井を貼り付ける前だったので肉眼で確認できました。これは竣工したら確認できないことなので、良い体験をしたと思いました。そして、意匠としては良くても施工上は問題が生じることがあることを、身を以って体感しました。
意匠といえば、この建物で一際目を引く下層部にある垂直に伸びるジグザグのデザインは、構造的には機能しておらず、担当の方からの話では上から吊らされており、カーテンのような状態だそうです。これも意匠を建築に組み込む上での工夫として、勉強になった点です。

●エクシブ有馬離宮新築工事エクシブ有馬離宮新築工事PHOTO
CHASKA茶屋町からバスに揺られること約1時間。エクシブ有馬離宮新築工事現場に到着し、建物や施工計画についての説明を聞き、班ごとに現場を見学しました。
山を削って平らな土地を作っているため、施工現場には数箇所に土砂を抑えるための処理が施されていました。斜面地の工事ではコンクリートを打設した後でも地下水が内部に入り込んでくることがあるので、そのための処理として左の写真のように外壁から入ってくるエクシブ有馬離宮新築工事PHOTO水を受ける部分を作っているという説明を受けました。この説明を聞いて、斜面に建物を建てることの難しさや、施工する際には“土との闘い”を避けることはできないということも感じました。そして、その難題を解決するための技術や努力がこの場所に注ぎ込まれているということや、素晴らしい建築をつくるためには多くの人々の協力が必要不可欠であるということを担当者の説明や、働いている工事現場の方々を見ながら思いました。


●兵庫県立美術館・なぎさ公園兵庫県立美術館・なぎさ公園PHOTO
再びバスに乗り込み、30分かけて兵庫県立美術館に到着しました。私は二年前に一度ここには訪れたことがあるのですが、BCS賞に選ばれていたことは知りませんでした。だから、今回の見学会では、建築の素材や構造など、細かいところに目を配り、前回訪れた時に兵庫県立美術館・なぎさ公園PHOTO気づかなかったこと学びながら見学したいと思っていました。また、今回の見学では当時施工管理を担当された方の説明があると聞いていたので、建築秘話が聞けることの期待に胸が膨らみました。
見学では、元所長より様々なお話を聞くことができて、本当に有意義な時間でした。一度貼り付けた壁面パネルや柱のパネルを違うサイズで貼り直せと言われたことなどの安藤忠雄氏との格闘の日々のお話や、屋根の厚さ、壁や床の素材に関する工夫、免震構造の説明、15m以上あるスラブの構造秘話、建物大部分に使用されている御影石の表情を完成させるのに一年という歳月を要した話など普通に見学していては絶対に分からないことを教えてくださったので、とても勉強になり、この見学会に参加兵庫県立美術館・なぎさ公園PHOTOして本当に良かったと思いました。
兵庫県立美術館の建物の特徴としては、もちろん御影石や三枚の大屋根、階段の作り出す魅力的な空間などが挙げられますが、訪れた人の印象に残る空間は、建物の南側に位置する螺旋階段ではないでしょうか。私も兵庫県立美術館と聞けば、大屋根か螺旋階段が頭に浮かびます。この螺旋階段に関しても、貴重なお話を聞くことが出来ました。螺旋階段は打ちっぱなしのコンクリートで仕上げられていますが、コンクリートを流し込むための型枠を作製するのに苦労したこと、まずは周りの壁のコンクリートを打ち、その後で階段部分のコンクリートを打つという工程で作製したこと、実は上から吊らされているので下には20mm程の隙間があること、完成した螺旋階段を見て安藤忠雄氏が「日本の技術屋も捨てたもんじゃない」とおっしゃっていたお話等々、学生の視点では気づくことが難しい、目からウロコがヒラリと落ちるお話が次から次へと出てきました。螺旋階段は一例に過ぎないが、このような表には出ない話にはとても興味があり、将来役に立つ知識などを教えてもらえたので、非常に良い見学会でした。そして、やはり見学会は当時の施工担当者と一緒に見て回るのが良いと思いました。

●終わりに
現場を自分の目で見て、素材に触れ、仕事に携わる人の話を聞くことは面白いと思いました。また現実的な建築の勉強をさせてもらって、まだまだ自分が勉強不足であることも痛感しました。
私は将来設計者として建築に携わりたいと思っていますが、現場の知識無しでは絶対に成り立たない仕事なので、設計の技術を勉強しつつ、施工に関する技術も並行して勉強していきたいと思います。
最後に、貴重な見学会を計画してくださった主催者の方々、説明してくださった担当者の方々に深く感謝致します。また、機会があれば是非参加したいと思いますし、今回訪れた施工中の建物が竣工したら是非足を運びたいと思います。



京都府立大学/人間環境学部/環境デザイン学科/住環境学専攻 3回生 稲川静香

CHASKA茶屋町PHOTO私がこのツアーを知ったきっかけは、就職活動の一環として合同説明会に参加した際、建設会社の方に頂いた案内書でした。私は建築施工に興味を持っており、ゼネコンの施工現場を見られる、それも超有名建築家、安藤忠雄さんの手がけるビッグプロジェクトの施工段階を見られる機会がこの先あるだろうか!しかも無料!?…ということで、誰ひとり知り合いのないツアーでしたが、迷うことなく応募しました。
当日は、CHASKA茶屋町新築工事見学から始まりました。想像していた以上に建設現場は広くきれいな空間で、現場の作業員同士の会話や作業風景など、初めて体験するナマの施工現場に、終始目が離せませんでした。CHASKAは高層階にはスカイチャペル、中層階はホテル・住宅、低層階は、テナント店舗が入る予定ということで、各層ごとに建設のポイントや進め方が異なっていて、説明がとても良い勉強になりました。そして、鋭利な三角形をした高層階の隅部分を支える工夫や、1フロアに1千トンも使用されているというスーパートラスの威圧感など、技術の力強さに圧倒されました。CHASKA茶屋町PHOTO
見学後は、用意していただいた豪華なお弁当の昼食をとりながらの質問会となりました。作業現場を実際見て湧きあがった疑問や、構造のこと、建設業の魅力まで、幅広い質問に丁寧に応えていただきました。また、空き時間には工事担当者の方々に個人的にお話しを伺うこともでき、女性が施工現場でどういうふうに働けるかについて、アドバイスを受けました。他の参加者たちも、担当者から色々お話を伺っていたようで、とっても刺激的な時間だったと思います。
午後からはエクシブ有馬離宮新築工事現場へ移動しました。移動時間も、過去のBCS受賞作品のDVDを見たり、参加者全員にプレゼントしていただいた現場監督をテーマにした漫画を読んだりして過ごし、終始建築に触れていました。現場に着いてからは、まずスライドで設計コンセプトや工事エクシブ有馬離宮新築工事PHOTO状況の説明を受け、模型、施工現場の順で見学しました。いたるところに現地KY(建設用語で、キケン予知!)の貼り紙があり、廃材の分別BOXが設置されていたのが印象的でした。作業員の方が、危険箇所となり得る部分を通る時は、指をさして頭上をチェックしてから通るなど、少しの油断が大きな事故に繋がるという現場作業の厳しさを感じとると共に、私の中で豪快な建設現場の作業イメージが、とても繊細なものであると感じるようになってきました。
最後は2002年安藤忠雄さん設計の兵庫県立美術館見学ということでしたが、当時の現場所長の解説つきという、何とも贅沢な見学となりました。コンクリートの下に貼る板の長さや、景観としての建物の見え方など、設計者の細部にわたるこだわりを実現させるために走り回ったこと、お礼(お詫び?)にネクタイをもらったこと、円形階段の職人技術に安藤さんが大変感動した、などの建築の裏に潜む設計者・施工者の人間味あふれるエピソードから、普通には気づかない、免震技術が使われた箇所の説明まで、充実した内容でした。最後にはちょっとした自由時間もあり、美術館巡りまで楽しめました。

兵庫県立美術館PHOTO

これから厳しくなると言われている建設業界に希望が持てる、夢のあるツアーでした。建築大好きな人はもちろん、将来建築の道に進むか迷っている、という人にもぜひおススメしたいです!! ツアーを準備・運営して下さった関係者の方々、本当にありがとうございました。